皆さんは、歯医者の診察ユニットに
ゴロンと横になったとき、
心の中で
「これってどうすればいいんだろう・・」
「私だけが考えすぎなのかな・・」
と、密かにドキドキしたり、
葛藤したりした経験はありませんか?
実は、
歯科医院の診療室の中は、
患者さんにとって
「日常とは少し違う特殊な空間」
です。
鋭い器具の音、
独特の薬のにおい、
視界が制限される状況。
そのため、
多くの方が同じような疑問や、
ちょっとした恥ずかしさを抱えています。
今回は、
渋田歯科クリニックの患者さんからも
特によく耳にする
「4大診療室あるある」を
ピックアップしました!
それぞれのシチュエーションでの
「患者さんのリアルな本音」に
寄り添いながら、
僕たち歯科医師や
歯科衛生士が
実は舞台裏でどう思っているのか、
プロとしての本音と
優しくためになるアドバイスを
詳しく解説します。
次回の通院が
少し楽になるはずです!
ぜひ肩の力を抜いて読んでみてください。
あるある①「痛かったら手を挙げてください」のタイミング問題
診察ユニットに横になり、
いよいよ歯を削る治療や
麻酔をするとき、
クリーニングで歯石とりをするとき、
歯科医師や歯科衛生士から
から必ずと言っていいほどこう言われますね。
「途中で痛かったら左手挙げてください」
このフレーズ、
一見すると非常に優しい配慮に思えます。
しかし、
いざキュイーンという
鋭い音が響き、
治療が始まると、
患者さんの頭の中では
次のような激しい葛藤が
繰り広げられていると思います。
・「『痛っ!』と思った瞬間挙げていいの?
それもとも少し我慢するの?」
・「麻酔が効いているはずなのに・・
なんかズンズン響く感じがする・・
これは『痛い』のジャンルに入る??」
・「今チクってしたような・・
でもこの程度で手を挙げたら『めんどくさい患者』だと
思われないかな・・」
・「機械の音、削る音が大きすぎて、
本当に痛いのか、怖いだけなのか
分からない~💦パニックになる~!」
このように、
多くの患者さんが
「手を挙げるタイミングの正解」
がわからず、
結局ギリギリまで我慢して
体に思いっきり力が入り、
翌日謎の肩こりになってしまう・・
という事態に陥ってしまします。
【僕たちの本音】遠慮はいりません!「痛いかも」と思ったら挙げてください。
結論からお伝えします。
僕たちは、
患者さんが思っているよりも
ずっと手前の段階で、
遠慮なく手を挙げてほしいと
思っています!
「こんな小さな痛みで手を挙げたら迷惑かも・・」
なんて思う必要はありません。
むしろ、
限界まで我慢して、
痛みが頂点び達した時に
体が「ビクッ!」と
無意識に動いてしまう方が、
ミクロン単位で
精密な仕事をしている僕たちにとっては
一番ヒヤリとする瞬間なのです。
具体的にどのタイミングで挙げればいいの?
目安は以下の3つです。
①チクッとした、ズキッとした明確な痛みを感じた時、
②痛くはないけれど、重い鈍痛や響く感じがして
「不快」「怖い」と思った時
③「これ以上続けたら痛くなりそう」と予感した時
これらのタイミングで、
スッと左手を挙げて教えてください。
手を挙げていただければ、
僕たちは治療を一度ストップし、
「麻酔を追加する」
「削る角度や回転数を変えて振動を減らす」
「少し休憩を入れて息を整えてもらう」
といった適切な対応を
取ることができます。
あるある②「お口をゆすいてください」での全力うがい
治療の合間に訪れる、
砂漠のオアシスのようなひととき。
それが、
「はい、一度起こしますので口をゆすいでください」
と言われて、
診察ユニットが起き上がる瞬間です。
この時、
目の前にあるコップの水を使って、
ここぞとばかりに
「ガラガラガラガラーーーーーッ!ペッ!!」
と全力で豪快にうがいをしていませんか?
お口の中をスッキリさせたい気持ちは
とてもよくわかります。
特に歯を削った後の粉っぽさや、
歯医者特有の苦い薬の味が残っていると、
強い水の力で一気に洗い流したくなりますよね?
しかし、
ここにも意外な落とし穴と、
歯科医師からの小さなお願いが隠されているのです。
【僕たちの本音】麻酔の後や抜歯の後は「優しくうがい」が鉄則
実は、
治療の状況によっては、
激しいうがいが逆効果になり、
治療後の経過を悪化させてしまうことがあります。
特に気をつけていただきたいのが、
「麻酔が効いている時」と
「歯を抜いた後」の2つです。
1、麻酔が効いている時
麻酔が効いていると、
唇や頬、口角の筋肉の感覚がマヒしています。
そのため、本人はいつも通りにうがいしたつもりでも、
口の端の隙間からお水が漏れて
お洋服を濡らしてしまったり、
勢いよく吐き出そうとして、
水を吐き出すボール部分(スピットン)からもれて
床が水浸しに・・・
なんてことがよくあります。
2、歯を抜いた後・出血を伴う治療の後
歯を抜いた後の傷口には、
かさぶたの役割を果たす、
「血の塊(血餅)」が作られます。
これが傷口をゼリーのように覆うことで、
細菌の侵入を防ぎ、
骨を守りながら傷を治していきます。
ここで激しくうがいしてしまうと、
その水圧でかさぶたが洗い流されてしまいます。
そうなると、
止まっていた血が再び出血し、止まらなくなったり、
「ドライソケット」という、
激しい痛みを伴う状態になってしまうことがあります。
【診療室での正しいうがいのコツ】
診療室内でのうがいは、
喉を鳴らす「ガラガラうがい」ではなく、
お口の前の部分だけで行う
「くちゅくちゅうがい」が基本です。
お水を口に含んだら、
頬を軽く動かして、
優しく吐き出すだけで
十分汚れは落ちます。
あるある③治療中に目が合う気まずさ
治療中にお顔にタオルをかけないスタイルの医院や、
タオルの隙間から外がチラリと見えるとき、
ほぼすべての方が直面する問題ーーー
それが、
「治療中、
私の目線はどこへ・・・問題」です。
ふと上を見上げると、
治療をしてくれる先生や、
バキューム(口腔内の水分を吸う機械)を
持ってくれている衛生士さんの顔が、
わずか数十センチの距離にあります。
「目が合ったら気まずいから、
必死に天井の模様を見つめてみる」
「ライトの眩しい光を見すぎて目がチカチカする」
など、
視線の置き場に困って、
目元がキョロキョロと泳いでしまう患者さんは多いです。
【僕たちの本音】僕たちは歯しか見ていません!目は閉じていて大丈夫です!
これに対する僕たちの本音は・・・
「僕たちは、患者さんの『歯』と『口の粘膜』に
全集中しているので、目が合っても気にしません!」です。
顕微鏡や拡大鏡(ルーペ)を使っていることも多く、
視野は数ミリの世界。
ですので、
視線をどこに固定すべきかという疑問への回答は、
「そっと目を閉じていただくのが、実は一番おススメ」
となります。
目を閉じていただくことは、
医学的には以下のような大きなメリットがあります。
・物理的な目の保護になる:
治療中は、削った歯の微細な粉末や、
お水などが飛散することがあります。
目を閉じておくことで、
これらが目に入るトラブルを自然に防ぐことができます。
・心理的なリラックス効果:
あえて視覚からの情報を遮断することで、
脳の緊張が和らぎ、
恐怖心が軽減します。
・目の疲労軽減:
お口の中を明るく照らすための
強力なライトが直接視界に入らないため、
治療が終わった後の目の疲れが違います。

あるある④「よく磨けていますね」と言われたくて、直前にいつもより丁寧に歯を磨く
歯医者の受付を済ませた後、
待合室の洗面台や、
ご自宅を出る直前の洗面所で、
普段よりもレベルアップした
スピードと力強さで
「シャカシャカシャカシャカ!」
と一生懸命歯を磨いている方が
いらっしゃいます。
その心理はまさに、
「テスト前の一夜漬け」状態です。
「全然磨けていない、と思われたくない」
「ほめられたい!」
といった、
健気な努力をされる患者さんがたくさんいらっしゃいます。
【僕たちの本音】お心遣いは大感謝!でも「普段のお口の中」を見せてくれた方がうれしいです
まず大前提として、
治療やクリーニングの前に、
「口の中をきれいにしておこう」
というそのお心遣い、
僕たちスタッフとしては本当にうれしく、
感謝の気持ちでいっぱいです。
ご飯のあとで、
食べかすが残っていない状態にしていただいていると、
実際の診察も非常にスムーズに進みます。
しかし、クリーニングをする歯科衛生士側の本音として、
「実は、普段通りの磨き残しがある状態で来てもらった方が、
あなたのために効果的なアドバイスができる」
というメリットもあります。
プロの衛生士の目は、
直前にどれだけゴシゴシ磨いてカモフラージュしても、
歯と歯の間や奥歯の裏側に残る
「古いプラーク(歯垢)」や「歯石」から、
普段の本当の歯磨き習慣を簡単に見抜いてしまいます。
ブラッシング指導の目的は、
点数をつけてあなたを評価することではありません。
あなたが普段、
無意識のうちに磨けていない「苦手なゾーン」を見つけ出し、
そこをどうすれば奇麗にできるか、
そのコツややり方を一緒に考えることです。
そのため、診療直前の歯磨きは
食べかすを落とす程度の軽いもので十分です。
最後に:診療室は、もっとリラックスして、甘えていい場所です
これらのあるあるはすべて、
皆さんが「治療をスムーズに進めたい」
「先生やスタッフに迷惑をかけたくない」
という、周囲への優しいお気持ちを持っているから生まれる悩みです。
しかし、僕たちは、
もっと肩の力を抜いて、
リラックスして治療やクリーニングを受けてほしい、
と心から想っています。
渋田歯科クリニックでは、患者さんが小さなストレスや
疑問を感じることなく、
お家にいるときのようにリラックスして通える環境づくりを
何より大切にしています。
気になることがあれば、
どんな小さなことでもスタッフや僕に気軽にお声がけください。
参考文献
・日本歯科麻酔学会「歯科麻酔学第8版」
・公益社団法人 日本口腔外科学会「口腔外科治療のガイドライン」
・一般社団法人 日本歯科医学会「歯科医療における感染管理および安全対策」
・厚生労働省e-ヘルスネット「プラークコントロール」/日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」